ライブシーンが来ると記憶が飛んじゃうんで各幕序盤はいいんですけど、このまま一気に全部書き上げられるかいまいち自信がない第3幕編スタートです。
アニメ中で描かれていた活動の裏で黙々と続いていたASのバックダンサーのお仕事が遂に未来たちTeam8thに回ってきます。
先輩たちより一足先に会場に赴いた彼女たちが見たのは開演を待つ大きな会場。
工具などの金属音が広大な空間に散発的に響き渡る様子がライブ前独特の雰囲気を醸し出しています。これは第1話のシーンも同様で、他にも無言のシーンで聞こえてくる空調の音がカットに合わせて音量変えてあったり、こういう緻密な空気感はさすが演出家出身の監督さんだなあと思うところ。全編通じて見事な舞台装置として機能してますよね。
ここで憧れの春香たちと同じ舞台に立てる。しかし喜びもつかの間、AS組との合同リハーサルを終えるとすっかり意気消沈してしまう8thのメンバーたち。全力を出しても全く追いつくことが出来ない実力の差を痛感し、それぞれ長い夜を迎えることになります。
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ステージへと向かった未来はこれから自分が立つライブの舞台に思いを馳せていました。そこへ現れたのはASのセンター・春香。彼女は未来にステージ上からは全ての観客席が見渡せること、ライブはそこに関わった全ての人たちによって作り上げられるものであること、だからこそかけがえの無いものであることなどを語ります。
ここで是非注目してもらいたいのはステージに座って話をする2人を背景から写したカットで、話に熱が入るあまり先輩の春香の方が後輩の未来に向かって何度も身を乗り出すんですよね。一方聞く側の未来は相手の言いたいことを即座に察するのが元々やや苦手なぶん、背後からだとただ座っているようにしか見えなくて「ちゃんと聞いてんのかなこの子?」と観客の我々の方が心配になってきてしまう。
そうやって溜めに溜めたところで春香の言葉に心を動かされて進むべき道を見つけた未来が、今度は急にバッと立ち上がる、それどころか逆に春香に向かって手を差し伸べすらしてしまうという。これだからこそ未来がミリオンライブのセンターなんだというのをこれ以上無い形で描いていますし、ASのセンター・春香とミリオンのセンター・未来という2人のセンターのあり方の違いをさりげなく、しかし完璧な形で浮き彫りにしています。めっちゃすき。
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ホテルのラウンジでしょんぼりしていたのは紬と歌織。それでもあくまで紅茶を飲むあたりに育ちの良さがにじみ出ているのがまずポイント。そこへ伊織・真・雪歩が通りかかります。ASが先輩として相談に乗る姿ってなんかもうミリシタでは見慣れちゃった気がしてましたけど、ミリアニの時系列で改めて見てみると765プロって先輩も後輩もいない不思議な事務所の状態が劇場組が来るまでずっと続いていたんですよね。
だからこそ常に仲間同士で問題を解決してゆき、今では無二の結束力を持つAS組。そんな彼女たちが劇場組を迎え入れるにあたってのバタバタは劇場版でも一端が描かれましたが、まあその後もここまで結構探り探りでやってきたんだろうなということに思いが至ります。バックダンサー修行は既に34人分続けてきただけに先輩方のケアも慣れてきた感がありましたね。ついでに1人だけカップの持ち方が違ういおりんから漂う別格に育ちが良いとこのお嬢様感、さすが。
次元の違う存在に見えていたASでも、褒められると照れ、子供のように喧嘩する。そんな姿に緊張をほぐされた2人も明日の奮闘を誓います。
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静香は夜の浜辺で千早の持ち歌であるSnow Whiteを歌っていました。
静香がこの曲をこの後のASライブで歌う可能性は普通に考えたら無いでしょう。つまり動機はライブの準備に対する不安等ではなく、自分の至らなさを受け止めたうえで昼間見た千早の姿に少しでも早く近づきたいという純粋な憧れの気持ちです。月と海に照らされたその姿は、当の千早が目にしても思わずシャッターに納めてしまいたくなるほど絵になるものでした。
千早に父との確執の話をする静香。
ミリアニの静香はこの話をすることにためらいがないぶん周囲のサポートを受けやすいのはいいことなんですけど、その相手が毎度地雷原なのはなんなのか。しかしそれを聞いた千早の答えがお父様の気持ちは分からないけれどと前置きしたうえで静香はアイドルに大切なものをもう持っているとだけ伝えるのがね!ほんと”ミリオンライブの千早”なんですよね!!!このへんは是非ミリアニ組にミリシタのコミュも味わっていただきたい。
千早は「アイドルに大切なもの」についてここで具体的に言及しません。静香にはその言葉だけで十分でしたし、物語としてはこの「アイドルに大切なもの」をこの次の翼が考えることがテーマの一つになっていきます。
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憧れの美希の部屋に夜間突撃する翼、しかし当の美希は不在でした。
館内を歩き回る翼は、独り大きなガラス窓の前で振りの確認をする美希を発見します。ここ、鏡じゃなくてガラス窓なんですよね。初めからそのつもりがあったのなら大きな鏡くらいあらかじめ手配できそうなところ、思いつきで部屋を抜け出して適当な場所を見つけた感が出ています。
”美希ちゃん”にも褒めてもらおうといつもの調子で近づく翼でしたが、本気を出していないことを美希に指摘されあしらわれてしまいます。実際リハで他の面々がぐったりしているところ一人ケロッとしていた翼。今回決められた水準のパフォーマンスをこなしきったのは彼女だけでしたが、全力を出し切ったうえで水準を超えるのがアイドルのパフォーマンスである以上、スタート時点で失格と見做した美希。例えそれがリハーサルのステージであったとしても、まず全力は出して当然というのは大前提過ぎてもはや口にすらしません。
何が間違いだったのか考えるところから始めなくてはならなくなった翼。静香とは逆に先輩から「アイドルに大切なもの」を持っていないと指摘されてしまいました。
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結局翼はその晩眠れなくなってしまい、先ほど美希が練習に使っていたホールへと向かいます。そこで目にしたのは自主練に精を出す未来と静香の姿、間もなく紬と歌織も顔を見せます。バラバラに夜を過ごした皆の目指す先は一つでした。
すっかり日が昇るまで練習に明け暮れた5人。前日のリハーサルでは一人ケロっとしていた翼も、このシーンでは肩で息を、全力を出し切るようになっています。ようやくここで翼も未来たちと同じスタートラインについた、と。
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迎えた本番のライブ。
未来たちが3・2・1のカウントダウンから舞台上に跳び上がる一瞬のシーン、あれがもう、ほんと最高! スローモーションで流れる視界に飛び込んで来る輝きに埋め尽くされた世界。百合子が、春香が、目を輝かせて語っていた光景を8thメンバーが始めてステージから目にしたのがあのときなんですよね。しかし新人たちが感慨に浸れるのは刹那の一瞬のみ。あとは怒涛のように進んでいくライブの臨場感が堪りません。
そして選曲の話。
毎度意外にして絶妙な選曲で我々の度肝を抜いてきたミリアニでしたが今回のパフォーマンスアクトはアイマスPなら知らぬ者は居ない代表曲”READY!!”。
置きに行った?
いやいやそんなことなかったでしょう。
”ALREADY!!
WE’RE ALL LADY!!”
ここでガッツリ未来たち劇場組が抜かれてたじゃないですか。
”ALREADY!! WE ARE ALL LADY!!“は”ALREADY!! WE’RE ALL READY!!“。長らく続いてきた劇場組のバックダンサー修業がこれで終わり、『私たちはもう全て準備が整った』。それを告げる”READY!!”なんです。
物語最大のクライマックス、765ライブ劇場開演はもう目前です。
→ テレビ放送後の感想延長戦・第9話
ワンフレーズ・ワンアクションが最強の仕事をした話(第10話ネタバレ解説&感想)
ミリアニは脚本を褒めたら良いのか、演出を褒めたら良いのか、両方愛がすごすぎてどっちの仕事なのか分からない名シーンが多すぎるんですよねえ。まあ両方褒めておけば多分それで間違いないんですけど、いやー、脚本上での山場となる今回もここの冴えがヤバかった。
というわけで第10話にして物語の軸の一つ、静香と父の問題が一応の完結を見ます。
千早が率いるコンサートメンバーに急遽抜擢された静香。併せて志保と星梨花が選ばれます。4人とも父親について何らかのエピソードがある面々、第10話は親子をテーマにした物語が展開していきます。重くなりがちな内容の回に登場した星梨花父がまさかのコメディリリーフ。ミリアニに出てきて声がついただけでびっくりしたのに何なのあのおいしすぎるおっさん!嫉妬!
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まず、また「ああ、ほんと良い言葉選びするな」って思った話。
Pが未来・翼と一緒に静香の家へ父親にコンサートを見に来て欲しいと説得しに向かったシーン、あそこでPたちを先に見つけた静香の父が最初に「何でしょう?」と言った、ここ!
だって普段静香と顔もあわせないくせに、数ヶ月前に一度原っぱライブ後に挨拶しただけのP(と未来・翼)の顔をちゃんと覚えてたんですよ。自分の家の前に立っている人間の素性が分かっていないと最初にかける言葉が「何でしょう?」にはならないじゃないですか。自分の子供にとって大切な存在の顔は、親としてひとまず記憶している、静香の父は静香の父なりに子を愛している・・・っていうのがこれだけで察せられるんですよね。これがワンフレーズの話。
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ちょっと飛んでコンサートライブのシーン。
オーディションの舞台で未来と翼に背中を押されたことがきっかけで憧れのアイドルへの切符を掴み取った静香は、今度は父親が見に来ているかもしれないステージへ向かうため、もう一度2人に背中を押して欲しいと頼みます。そしてステージ上で見せたのは再びアイドルとしての幻影。
ええ!?もう既にS4U・”Catch my dream”っていうこれ出したって確実に100点満点間違いなしの答えがあるのに、ここでまさかのソロ新曲っすか!??
”Gift Sign”については・・・すいません完全な不意打ちであわあわすることしかできなくてほとんど覚えてないです・・・。あとで落ち着いて聴ける機会が来たらそっと書き直します。
静香が渾身の舞台を終えたあと、Pは静香の父へ彼女がアイドルとしていかに素晴らしい才能を持っているかもう一度説明します。かなり抽象的なことしか言っていないのに「知っています」と返す父。
静香が大切にしつづけていた記憶・「アイドルになりたい」。あの思い出の視線の先に居たのは他ならぬ父その人でした。今、目の前で静香が目指す”アイドル”というものを見せられた父にとって、それが娘とどう結びつくかなど他人から説明されるまでもありません。最も身近にいて、最も早くその才能に気づいたのがかつての彼だったのですから。
誰かを笑顔にすることこそがアイドルの本分。
その文脈の中で千早が静香に告げた「アイドルに大切なものはもう持っている」と言う言葉。”大切なもの”とは静香が幼い頃からずっと守り続けてきたアイドルに対する限りない憧れでした。
無限に高みを目指し続けられる静香ならば、例えどんな相手であってもその力で心動かすことが出来る。千早が今回のコンサートのメンバーにまず静香を選んだのは言葉ではなく体験でそれを知ってもらいたかったからでしょう。目論見は見事に当たり、静香は最良の結果を掴むことが出来ました。
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コンサート終演後、父親が舞台の上に現れてもなお前に立つことを躊躇してしまう静香。そんな彼女の腕を志保が掴んで父親の前へと放り投げます。
はい、この演出、ヤバいです。
第9話で千早が父親の気持ちは分からないと言ったのと同様に、志保も父親という存在とどう付き合ったら良いのか知らない子なんですよね。だからああいう場面でどうしたらいいか彼女には分からない。ただただ何かしなくちゃという気持ちから出た結果が、ここではもう台詞すら無く、たったのワンアクションで表されてしまう。
志保の幼さや不器用さ、それに優しさや幼稚に父に反発する静香への反感などまで盛り込みつつ、しかもこれは先ほど静香が未来・翼に背中を押されて舞台へ上がったことと対になっていて、突き詰めて言えば静香が仲間に応援されている意味では同じことを繰り返しているっていう、見た瞬間「え?いまこれどんだけの内容詰め込んだ?」って若干考え込んだあと総毛立ちました。
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さて、これにて静香のエピソードもひとまず一件落着。
諸々の大きな問題はおおかた片付いて・・・無えじゃん!あれ?美希に「アイドルに大切なものを持っていない」と指摘されてしまった翼の問題の方は!?
これの答えがまた見事の一言でしたよね、あー・・・終わっとこう。また話が長くなる。
→ テレビ放送後の感想延長戦・第10話