ミリアニは脚本を褒めたら良いのか、演出を褒めたら良いのか、両方愛がすごすぎてどっちの仕事なのか分からない名シーンが多すぎるんですよねえ。まあ両方褒めておけば多分それで間違いないんですけど、いやー、脚本上での山場となる今回もここの冴えがヤバかった。
というわけで第10話にして物語の軸の一つ、静香と父の問題が一応の完結を見ます。
千早が率いるコンサートメンバーに急遽抜擢された静香。併せて志保と星梨花が選ばれます。4人とも父親について何らかのエピソードがある面々、第10話は親子をテーマにした物語が展開していきます。重くなりがちな内容の回に登場した星梨花父がまさかのコメディリリーフ。ミリアニに出てきて声がついただけでびっくりしたのに何なのあのおいしすぎるおっさん!嫉妬!
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まず、また「ああ、ほんと良い言葉選びするな」って思った話。
Pが未来・翼と一緒に静香の家へ父親にコンサートを見に来て欲しいと説得しに向かったシーン、あそこでPたちを先に見つけた静香の父が最初に「何でしょう?」と言った、ここ!
だって普段静香と顔もあわせないくせに、数ヶ月前に一度原っぱライブ後に挨拶しただけのP(と未来・翼)の顔をちゃんと覚えてたんですよ。自分の家の前に立っている人間の素性が分かっていないと最初にかける言葉が「何でしょう?」にはならないじゃないですか。自分の子供にとって大切な存在の顔は、親としてひとまず記憶している、静香の父は静香の父なりに子を愛している・・・っていうのがこれだけで察せられるんですよね。これがワンフレーズの話。
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ちょっと飛んでコンサートライブのシーン。
オーディションの舞台で未来と翼に背中を押されたことがきっかけで憧れのアイドルへの切符を掴み取った静香は、今度は父親が見に来ているかもしれないステージへ向かうため、もう一度2人に背中を押して欲しいと頼みます。そしてステージ上で見せたのは再びアイドルとしての幻影。
ええ!?もう既にS4U・”Catch my dream”っていうこれ出したって確実に100点満点間違いなしの答えがあるのに、ここでまさかのソロ新曲っすか!??
”Gift Sign”については・・・すいません完全な不意打ちであわあわすることしかできなくてほとんど覚えてないです・・・。あとで落ち着いて聴ける機会が来たらそっと書き直します。
静香が渾身の舞台を終えたあと、Pは静香の父へ彼女がアイドルとしていかに素晴らしい才能を持っているかもう一度説明します。かなり抽象的なことしか言っていないのに「知っています」と返す父。
静香が大切にしつづけていた記憶・「アイドルになりたい」。あの思い出の視線の先に居たのは他ならぬ父その人でした。今、目の前で静香が目指す”アイドル”というものを見せられた父にとって、それが娘とどう結びつくかなど他人から説明されるまでもありません。最も身近にいて、最も早くその才能に気づいたのがかつての彼だったのですから。
誰かを笑顔にすることこそがアイドルの本分。
その文脈の中で千早が静香に告げた「アイドルに大切なものはもう持っている」と言う言葉。”大切なもの”とは静香が幼い頃からずっと守り続けてきたアイドルに対する限りない憧れでした。
無限に高みを目指し続けられる静香ならば、例えどんな相手であってもその力で心動かすことが出来る。千早が今回のコンサートのメンバーにまず静香を選んだのは言葉ではなく体験でそれを知ってもらいたかったからでしょう。目論見は見事に当たり、静香は最良の結果を掴むことが出来ました。
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コンサート終演後、父親が舞台の上に現れてもなお前に立つことを躊躇してしまう静香。そんな彼女の腕を志保が掴んで父親の前へと放り投げます。
はい、この演出、ヤバいです。
第9話で千早が父親の気持ちは分からないと言ったのと同様に、志保も父親という存在とどう付き合ったら良いのか知らない子なんですよね。だからああいう場面でどうしたらいいか彼女には分からない。ただただ何かしなくちゃという気持ちから出た結果が、ここではもう台詞すら無く、たったのワンアクションで表されてしまう。
志保の幼さや不器用さ、それに優しさや幼稚に父に反発する静香への反感などまで盛り込みつつ、しかもこれは先ほど静香が未来・翼に背中を押されて舞台へ上がったことと対になっていて、突き詰めて言えば静香が仲間に応援されている意味では同じことを繰り返しているっていう、見た瞬間「え?いまこれどんだけの内容詰め込んだ?」って若干考え込んだあと総毛立ちました。
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さて、これにて静香のエピソードもひとまず一件落着。
諸々の大きな問題はおおかた片付いて・・・無えじゃん!あれ?美希に「アイドルに大切なものを持っていない」と指摘されてしまった翼の問題の方は!?
これの答えがまた見事の一言でしたよね、あー・・・終わっとこう。また話が長くなる。
→ テレビ放送後の感想延長戦・第10話
しずパパ説得する中で静香の事を語る3人(たしかPが『静香さんの歌には力がある』みたいにいうとこ)に対して「そんなこと…」って言って言い淀むとこ好きなんですよ
「そんなこと知ってるに決まってる!私のかわいい娘だぞ!!」って私の心の中の百合子が補完して『わかるぅ…』ってなっちゃった
静香父って親が子供を愛するのは当然っていう態度は別に隠してなくて、よく見ると分かるようになってるのが良いですよね。
もうちょっと子供に分かるように言葉にしてあげてよ・・・とは思いますけど、静香も父親に反発こそすれ無視するわけではないし、なんだかんだ将来的にはいいところに落ち着きそうな気がします。
これまで静香の夢を阻む「障壁」としての役割しか与えられなかった父親が、「なぜ夢を妨げようとするのか」を掘り返した結果、「静香と似た者同士だから」という結論になったのが恐ろしく美しかったですね。
ただ娘の夢を叩き潰したいだけなら、中途半端な猶予期間を与えるはずがない。
不器用でまっすぐで、大切なもののために時に周りが見えなくなる。
そんな「頑固者」の2人がとても愛おしくなる回でした。
中学生の間だけっていうのは元々言われてたことなんで大体あんな感じっていう設定自体は存在してたんでしょうねえ。
静香の側は似たもの同士って言う自覚がまだ無さそうで、一方志保がそれに気づいてるっていうのがほんといいキャラ造形だと思います。