やっぱりせーのでコミュ開いてその日の感想でみんなとワイワイできるってのは楽しいですね。
自分も日付変わると同時に5chのスレ開いて語り合ってしまいました。
謎の多いお話でしたがシタスレの方々の知見も借りて見返してみると、どうにか納得できる形に納められる気がしてきたので挑戦してみたいと思います。
当然のごとくネタバレしまくりますので必ずコミュを全て見た上でご覧ください。また、筆者の脳みその都合キャラ名が漢字だと誰が誰だか分からなくなって来るため便宜上カタカナでの記載とさせていただきます。
・永混(エマ):奈緒
・逢路蘭(アウロラ):環
・凛音亞(リンネア):このみ
・夜羽那(ヨハンナ):ひなた
・深淵海(ヘルミ):律子
わかりやすさ重視で核心からネタバレしていきます。
皆様ご覧になったとおりこの話の『神』はエマ本人です。
物語のラスト、エマとアウロラが2人だけになったシーンでアウロラは”永混”と書かれた字幕をわざわざ”神様”と発音しました。物語の核心が明かされ、真実が一つにつながった瞬間です。「いや、そう言われても分からんから!」って? まあそらそうよな、順に考えていってみましょう。
あの村の住人は『神』と契約する前に別のおそらくはもっと一般的な我々の知るような形の宗教を信仰していました。戒律を守って暮らしていたというヨハンナのモノローグとともに当時の様子を伝えるのが村にある廃教会という建物です。
“廃”教会、つまり昔教会として使われていたものが廃されてしまったんですね。
コミュで描かれる廃教会はそれなりに立派な建物で、ガラスすら手に入れるのが困難という村の物流事情にあってステンドグラスが用いられるなど扱いは破格。かつての村人達の信仰心の厚さが窺えますが『厄災』に晒され『神』との契約を迫られた時点で既存の宗教は棄て去られたのでしょう。新しい『神』は土着の、もっと得体の知れない何かのようです。
初期のコミュを見た人たちの多くが予想したとおり、あの村は『神』の力により延々と繰り返されるループに囚われています。
これは外部からの観測者役であるヘルミが村を訪れた際に十数年前と同じ姿で同じやりとりを繰り返すエマとアウロラに出会った時点で確信しており、一方で前回村を訪れた時はまだ幼かったヘルミが大人に成長していることからこのループは村の中だけで発生していることも示唆しています。
ループが起こると(アウロラを除いて)ループ前の記憶は消えてしまうものの、かすかな記憶としては残る模様。
ループが起こる引き金は『神』が酷く傷つくようなショッキングな出来事に直面することです。『神』は現在の状況を否定するために時を巻き戻しますが、何度巻き戻しても村人が凄惨な最後を迎えるため、その度に『神』が再び時を巻き戻す・・・というのを少なくとも十数年以上繰り返し続けています。
この話が滅茶苦茶なのは『神』が傷つく原因となる状況を『神』自身が契約により村人へ迫っていること。『厄災』から逃れるため村人は必死になって神下ろしの儀式を執り行おうとしますが、その光景を見た『神』がショックを受けて時間を巻き戻してしまうという言わばバグ状態です。
『神』が人と同等の感情を持ってしまったことがバグの原因であるとアウロラは語っています。『神』が人間のような心を持つまでは問題なく機能していた仕組みが、何らかの理由で『神』が心を持ってしまったためにループに陥ってしまいました。
アウロラが何者であるかについてははっきり語られていません。ただ『神』と彼女だけが同じ名前のままループし、かつ彼女だけが正確に事態を把握しているなど単なる人間でないことは確かです。
ヘルミは(エマの正体を見誤ってはいたものの)アウロラ達を「神に近い存在」と表現していました。巫女なのか、眷属なのか、精霊なのか、まあそんな感じのものなんだろうというくらいに考えておけば良さそうです。
アウロラの主な役割は『神』の地である村周辺のイレギュラーを廃すること。『神』の秩序を脅かすものに警告を与え、時には直接処分することもあります。『神』が人の心を持つものに変化してしまい、世界がループし続けている状態にあってもその役割は変わりません。
ところで村の外からやってきたヘルミやその父親は、考え方によってはその存在自体イレギュラーであるとも言えます。有無を言わさず排斥するという選択肢も取り得そうなところを今回もヘルミの訪問自体は受け入れ、また前回はヘルミとその父親を村の外に帰してさえいるため、管理はそれなりに寛容なように見えます。これには現状に対するアウロラなりの意図が関係しています。
アウロラの行動は常に『神』であるエマに対する深い親しみがベースになっています。彼女の第一の目的は大好きな神様とずっと一緒にいること。一方でループに陥っている現状についても「出来れば解消したい」くらいに考えている節があります。
余所者であるヘルミに接触し、断片的な情報を伝えたのもその一つ。
この時点ではループを望んでいるのか、ループの打破を狙っているのか、どちらにも取れてしまうんですけど
今回の結末がある程度予想できる段階まで進んだところでループについて明確に否定的な発言をしています。またループ発生の原因となった『神』が人の心を持ってしまったことについて「本当に気の毒」と発言しており、これらをまとめ合わせると神様とずっと一緒にいるという第一の目的ほど積極的ではないものの、繰り返す時間の中に囚われてしまった『神』を可能なことなら解放してあげたいという目的がある様子です。
毎回少しずつ違う要素を取り入れているのもアウロラなりの工夫の一つで、彼女自身は本編のループで言葉が話せないキャラを演じていたところを、次のループでは普段の環に近い快活な少女のキャラに変更しています。
ヘルミやその父親を一方的に排斥せずひとまず村に迎え入れているのも”新要素”であり、ループが起こるたびに様々な”新要素”を取り入れることで状況を打破しようとしている様子。ただ、その試みは今のところ成功していません。
一方でアウロラは今回のループで先代村長がリンネアの素性を隠し、彼女へ神下ろしを行おうとしていることを快く思っていませんでした。
その理由ははっきりとは述べられておらず、ただ「(先代)村長が厄介」でリンネアが神下ろしの対象になると「少し都合が悪い」と言っているのみです。
個人的な推論では「先代村長には『神』との契約を解除する何らかの策があり、その鍵となるのがリンネアを神下ろしの対象にすることだった」と考えています。
先代村長の腹案についてはほとんど直接的に語られていないためわずかな情報を集めて推測するしかありません。
先代村長が娘達の幸せのために『神』との契約解除を目論んでいたことは遺書に書かれています。
村長の企みに感づいているアウロラは、彼が招き寄せた学者であるヘルミに「キミ”も”、ジャマするつもりなの?」と迫ります。
ところが村長から既に企みの概要を聞いているヘルミは『神』のことをとにかく詳しく知りたいという本人の欲望のために村長を裏切り、アウロラの望みに協力することを申し出たためこの時点で作戦は失敗。それどころかその場で村長の殺害を持ちかける始末で、超常的な存在のはずのアウロラにすら引かれています。
アウロラとしてはループを打破するために新要素を盛り込むこと自体には反対でないものの、そもそも『神』との契約を解除されてしまっては大好きな神様とずっと一緒にいられなくなってしまう点で決して譲れない一線を越えています。”ループの解消”と”『神』との契約解除”この2つの要素は天秤にかけるまでも無く、アウロラは村長の目論見を打ち砕く選択をしました。
ヘルミはこの時点で二重スパイ状態となり、村長の作戦とアウロラから得た『神』の情報その両方を知る立場となりました。しかし真実はヘルミの想像を遙かに超えていたのです。
チャプタータイトルは「全てを知り得たもの」、つまりここで真実に辿り着くチャンスはあったものの欲望のままに事態を引っかき回すばかりの彼女の才覚では結局それは叶いませんでした。
アウロラがヘルミに託した望みは「村長の思惑どおりにリンネアが神下ろしの対象になることを妨害して欲しい」だけでしたが、ここからヘルミのとんでもない大暴走が始まります。
儀式は本来、村長を次ぐものの役目。
今回であればヨハンナかリンネアから選ばなくてはならないところを、恐らくはヘルミ個人の「本来の役目では無い人間に神下ろしたらどうなるんだろう?」という単純な好奇心から(ヘルミ自身は無関係な人物だと思っていた)エマが神下ろしの対象になるよう策謀を巡らし始めます。
「ちょっと待って、”誰かが身代わりを名乗り出た時は移行しても構わない”ってルールもあったでしょ?」いまこれを読んでいる人の中でそうツッコミを入れた人も多いでしょう。
確かにヘルミの口から”誰かが身代わりを名乗り出た時は移行しても構わない”と語られています。
が、多分これはヘルミが先代からヨハンナへの手紙を書き換えるか何かして仕込んだ嘘です。神下ろしにそんなルールは無いんです。
この会話の前にヘルミはエマへ村長姉妹と神下ろしの情報を伝えており、ヨハンナがリンネアを指名したところでエマが身代わりを名乗り出るのはほぼ既定路線でした。神様自分で書いた契約書の内容忘れちゃってるんかいって話ですけども。
ルート名の「虚実」とチャプタータイトル「捻じ曲がる定め」は物語に嘘が含まれていることを示しています。
アウロラもエマへの神下ろしが行われた後、自身の願いを曲解しとんでもないことをしでかしたヘルミを非難し「儀式は本来、村長を次ぐものの役目だ」と述べています。
ヘルミはこの時点でエマの正体を知らなかったため、エマが儀式で死亡しなかったことを理由に「別に村長を次ぐものに神下ろししなくても儀式失敗しなかったじゃん」とうそぶきます。
そもそも儀式として成立していないんですから成功も失敗も無く、事態が何も進展していないことを知っているアウロラの返事は素っ気ないものでした。
神下ろしの対象がエマになったことはアウロラにとって想定外だったはずですが、そのことに動揺したり止めようとしているシーンは見当たりません。「せっかくだしとりあえず今回はこれで何か変わるか試してみるか」程度の感覚だったんでしょうか。
元より先代村長の企みについても「“少し”都合が悪い」としか評しておらず、こちらも「ちょうどいいところにちょうどいいのが来たから」という感じ。実際の『神』の力が絶対的なものであることを伺わせます。
ヘルミがクローバー模様の痣を見てエマが『神』であると気づいたのは物語終盤。真相を悟った彼女は情報を土産に逃亡を図るものの、その程度のことは予測済みだったアウロラに見つかりあえなく処断。虫の息で村の外で待つヨハンナの元まで引き返すと「(エマを依り代に行った神下ろしが不成立だったため)『厄災』は終わらない」と言い残し、多分死にました。
「何をどうするか、決めるのは神なんだ(神下ろし候補を勝手に変更していいなんて神は言っていない)」。エマの正体を見抜くことが出来ず、余計な小細工をした結果『神』の生け贄に『神』を差し出してしまったことをアウロラは「バカだよね」と一言で切り捨てたのでした。
イベントカードにはリンネアがヘルミからもらったザクロを食べるシーンが描かれています。
アレがアレに見えたり、アレがアレに見えたり、どうにも物騒なこのイラスト。
アレルギーがあってザクロが食べられないリンネアに、皮をむいて食べればアレルギーは出ないと言ってヘルミがプレゼントしたものでした。神下ろしの儀式をこの後に控えたタイミングで。
食べられないと思っていたものが、ほんの少し食べ方を変えたらあっさり食べることが出来た。
許されないと思っていた他人を犠牲にして自分が生き残る生き方も、ほんの少し見方を変えたらあっさり出来ることなのかもしれない。
リンネアからすれば自らの命が助かるうえ、その後の措置と村長の地位はヘルミが保証してくれている・・・。(実際には2回目の神下ろし前にはもう死んでますけど)
「出来るわけがないと思っていたことも少し条件が変わればあっさり出来てしまう場合がある」とザクロの実を使った些細なやりとりで示すことにより、リンネアはヘルミの暗示にかかったのでした。
この頃にはヘルミも神下ろしはヨハンナかリンネアどちらかから選ばなければならないことを悟っており、両者の二択なら都合の悪いことを知りすぎているヨハンナの方を口封じも兼ねて犠牲になるよう仕向けるのは当然の流れでした。
惨劇の後、次にエマが目を覚ましたのは『神』の力によって再び時が巻き戻った世界。”巻き戻る”と表現しましたが、全てが元通りになったわけではなく細部は異なっています。
上述の思惑から自らキャラを演じ変えているアウロラは別として、リンネアはエルサに、ヨハンナはエミリアに名前が変わっています。(見方を変えると一部で言われていた本編コミュは様々なループの断片の継ぎはぎという説はここで否定されることになります。)
この変化はアウロラの干渉によるものなのか、はたまた『神』の力を持ってしても完璧な形での巻き戻しは出来ないのか、情報が無い以上断言できることはありません。
一つ注意して欲しいのはこのシーンはイベントコミュ第1話でエマが目を覚ましたタイミングではないということです。あのシーンではすぐに神下ろしの成否についてリンネアに訪ねていますが、ここではそのやりとりがありません。
また本編のループではエマの神下ろしの儀式の時点で既に死亡していた先代村長もここでは存命であり、これらをまとめ合わせるともっと前の時間に戻っていると考えられます。
誰を神下ろしの対象とするかがが重要な選択なのに、その選択をした後の時間までしか戻れないのでは本当にやり直しが効きませんからね。
こうやってまとめると本編自体はエマ・リンネア・ヨハンナを中心に進んでいく感じなのに、核心部分をスクリーンショットしていくとヘルミとアウロラばかりになっていって「本当に良く出来てんなあ」とそこでまず感心した次第。表向きは得体の知れないものに振り回される少女達のおどろおどろしい物語で、実際に話を進めているのは頭のおかしい学者と一途に神様を慕い続ける少女という構造になっているわけですね。
いきなり村長やっちまおうぜと言い出すあたりからしてやべーやつだったヘルミ先生ですが、整理してみると自分の好奇心のためだけに次々と恨みも何も無い人々を犠牲にしていくある意味「この人が一番の『厄災』なんじゃないの?」と言いたくなるようなサイコパス先生でした。まああの村からすると外部ゲスト扱いで巻き戻りの対象外であり、最後にちゃんと処されてるんで今後のループではもう二度と登場しないのが救いといえば救いですか。酷い話だ。
それよりもアウロラですよ。
ぱっと見では不気味な超常的存在。しかし心を持って変質し自らループに陥ってしまった『神』をずっと慕い続け寄り添っている健気な子なんです。
最後の最後で明かされた衝撃の事実に思わず悲鳴を上げたなんて言われたこの台詞も、一通りまとめた後にもう一度見返すと例えループし続ける世界であろうとずっと一緒にいられさえすればいいというアウロラの思いを一言に凝縮した台詞に感じられます。初見でゾッとして、事情を把握して聞き返すと泣けてしまう、「この物語はこの台詞のためにある」なんて意見も見かけましたけど自分も正にその通りだと思います。
人の理に囚われないが故にどこまでも純粋で一途な存在を演じる環がほんとにかわいくてかわいくてねえ。アウロラはこの物語の影のヒロイン、今回の配役一番の妙でした。
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いやー、長い。思ったより更に長くなってしまった。
考え事は文章化していくとまとまるのが自分の習性なもんで、半分自分のためにと思ってスクリーンショット集めて書いていったら我ながら結構すっきりさせられた気がするんですけど、どうでしょうか。
まだ細かいところで気になる点はいくつかあるんですけど、ひとまずはここで公開とさせていただきます。
長文ご覧いただきありがとうございました。そしてミリシタ運営の皆様にも、素晴らしい作品をありがとうございました。
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