今日は先日公開になったメインコミュ第147話「野辺見れば」がめちゃくちゃ良く出来てて好きっていう話。
メタな事情で言うと台本って恐らく「今回の主役はこの子、サブはこの子たちで」っていうところまで決まってから執筆が始まると思うんですけど、特に今回のコミュは初めからシナリオありきでメンバーを選んだんじゃないかって考えたくなるくらい、それぞれのアイドルの個性が活かされている気がします。
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2人とも良く周りが見える子なので、エミリーの様子がおかしいことにはすぐ気づきますが、「問題に気づけてもどうすればいいか分からないときは動きが取れなくなってしまう」未来はエミリーに声を掛けられません。これはミリアニ冒頭でも描かれた未来の特性。
対する茜の特性は「空気を読んでも流されない」。
彼女が何故ウザカワキャラを貫き通すのか、その理由をたった一言で自ら言い表してしまうところがマジ茜ちゃん。
一方そのウザカワな処世術は自分が突撃して愛嬌を振りまけば誰でも笑顔になるのが前提条件で、好意を持って接した相手から予想外の拒絶を受けると途端に自分が傷ついてしまうという脆さも併せ持っています。
溢れんばかりの愛に包まれて育ってきたであろう茜、そのぶん負の感情を向けられることに慣れていなくて自他問わずそういう状況に出くわした時はいつも非常に繊細な反応をします。
逆にさっきまで声も掛けられなかったのに、事情を聞いたらすぐ一緒になって怒ってくれる寄り添いに来てくれるのが未来。この2人、結構いいコンビになってますよね。
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しょげていた原因が判明し、皆に励まされてひとまず立ち直るエミリー。しかし新しい仕事の話題に入るとすぐにまた先日の出来事がフラッシュバックして躊躇してしまいます。
個人的にここがこのコミュで一番好きなところ。
何よりも愛し、得意だと思っていたダンスで過去に大きな挫折を経験している歩。子どもの頃からあこがれだった兄の背中を追って渡米した彼女は、その兄から「日本に帰った方がいい」と言われアメリカでの夢を諦めて帰国しています(メインコミュ第93話)。
歩コミュの中では「歩は日本で活動した方が輝ける」と兄が考えて帰国させたのが真意だったという話になっていますが、幼い頃から本当によく彼女を知っていてダンスの師でもあった兄に道を否定されるという経験は、歩にその後しばらくのあいだ「好きなものは好き」と言うことへの恐怖を間違いなく抱かせていたはずです。
そんな自分も時が経ち色々な経験を経てまた「ダンスが好き」と心から言えるようになっていった、「好きなものは好き」と言いつづけることこそが自らの道を切り開く力になる、だから躊躇わないで欲しい・・・と歩は落ち着いた優しい口調で諭します。
こういうところやはり年長者・実力者の風格があるし頼りになる・・・はずの歩。
決めるところはバシッと決められているのに、当の本人は相変わらず無自覚なのがなんとも彼女らしいんですけどね。
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小ネタも満載で「終わりそうな空気」を出したPにツッコむのは響。「終わりそうな空気」ってなんだよって話ですけど、このなかではPと一番付き合いの長い響がいち早く変化に気づくのは流石です。
茜が怪しい動きをするとすかさず律子の名前が出てくるのもすっかり定番のネタになりました。
それでも決してめげない。空気を読んでも流されない。チャンスさえあればいつ何時でも暴走する準備は出来ている。
職権乱用というフレーズに思わず笑顔になる茜。油断も隙も無いとは正にこのこと。
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今回の話のテーマになっている『絵羽模様』。
着物にはとんと縁がない自分、恥ずかしながら絵羽模様がどういうものなのかってこと自体今回のコミュで初めて知りました。
別々に切り出してきた生地を縫い合わせ、縫い目を超えて1つの大きな図柄を完成させる技法。
エミリーやポールたち、海外出身の人々が国境や文化の境目を超えて日本の人々とひとつ繋ぎのステージを/衣装を作り上げる過程をコミュで描き、締めのMVのタイトルが『絵羽模様』。うーん、痺れる。
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そしてコミュタイトル『野辺見れば』は万葉集の一首から採られています。
野辺見れば なでしこが花 咲きにけり 我が待つ秋は 近づくらしも
(不意に目に止まった)野に咲くなでしこの花に、待ち望んでいた(金色の実りの)秋が近づいたと気づかされる。こう解釈するとこの歌の情景はコミュに登場した先代の視点にぴたりと重なります。テーマを絵羽模様という伝統技法から採りつつ、更にストーリーが「なでしこ」を詠んだ1200年以上前の短歌の翻案になってるんですよね。いやほんと、すげえなこれ。
いずれも素晴らしいテーマ性をもつ素材たちの魅力を見事に生かし新しい物語にまとめあげる。Pたちの間でも評価の高い昨今のコミュ、そのなかでも出色の一篇でした。
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