第4話で台詞選びのセンスに身悶えた管理人。第8話でも再び身悶えることとなりました。
ほんの2文字、ほんの2文字なんですよ。このみさんの台詞にたったこれだけ付け加えるだけで相手への信頼と感謝、決意まであらゆる心境が描写できてしまう。これぞ大人の会話。本当に素敵です。
今回はTeam4thと5thのお披露目イベント。
Pは未成年しかいない5thのイベントに同行するため、4thはリーダーになったこのみが引率することに。まずは車内で点呼を取って準備万端、ついでにこれが本日メインになるメンバーの紹介と大まかな性格の説明となります。
車内で元子役である桃子の隣に座ったアイドルオタクの亜利沙は、桃子に過去の出演作を見たと報告しますが、予想外にネガティブな反応をされてそれ以上突っ込めなくなってしまい、微妙な雰囲気が漂う2人。
桃子がかつては子役だったという話は既にアニメ中でも何度かされていますが、その人気がドラマで主役を張るほどのものだったと明言されたのは初めてです。さらに具体的な作品名や役柄まで言及されるのはミリシタなど他作品まで含めても珍しい展開で、第8話はこの設定がシナリオに大きく影響していきます。
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ここまで順調にイベントを成功させてきた765プロシアター組のプロジェクト、しかし今回はまず予定していたステージがトラブルで使用不能、代わりのボロボロのステージは人通りすらない閑散とした立地で、初回の客足は猫まで勘定に入れても散々なもの。Team4thの船出は打って変わって厳しいものとなりました。
酷な指摘をしてしまうと、これまでのイベントが成功したのは会場の立地であったり、ASや765プロの看板に頼った部分が非常に大きかったというのが実はその都度きっちり描かれてるんですよね。
原っぱライブは元々人通りが多い場所での開催なうえ、茜ちゃんねるにASが生出演し1万人弱もの視聴者を集めるほど注目を集めていた中での開催。1stのライブは765プロ新劇場の発表を兼ねて報道陣がお膳立てされていましたし、2nd・3rdの対決生配信も亜美真美MCの生っすか番外編からというはっきりした導線が用意されていたうえでのお披露目でした。これらが無くなってしまうとどうなるかというと・・・という現実をTeam4thはトラブルとの合わせ技で唐突に突きつけられてしまいました。
なんで今回に限ってそういうプロモーションやんなかったのよって話なんですけど、そもそも原っぱライブの広報だって茜ちゃんが勝手にAS使って宣伝したのがバズってただけみたいなところがありましたし、Pたちはそのへんあんまり深く考えてなかったんじゃないでしょうか。それでも立て続けにうまいこと行ってしまったため、世間の注目度やプロモーション規模の目測を見誤ったんだろうと個人的には考えています。
公私混同甚だしくチャンネル登録者数を荒稼ぎしていた茜ちゃんは第5話でとうとう「茜ちゃんじゃなくてお金ちゃんだね」なんて酷いこと言われてしまいましたけど、あれはね、単に私腹を肥やしていたわけじゃないんですよ!いや、私腹を肥やしてはいましたけども!
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今までのユニットの成功を見た後だけに、ショックも大きくすっかり意気消沈してしまったTeam4thメンバー。「駆け出しのアイドルはこんなもの」とフォローを入れる亜利沙ですら落胆の色は隠しきれません。リーダーのこのみもこの状況をどうしたらいいか分からずただ立ちすくむばかりで、Pに一度相談すべきと頭で分かってはいても出発時に任せろと言ってしまった手前なかなかその一歩が踏み出せません。
大人っていうのはこういうところが厄介で、むしろ最年少の育と桃子の方がお互いあけすけなメッセージを交換し合って状況を把握しています。Pがこのみへ慌てて電話したのも、桃子からの連絡を受けた育がPに4thの窮状を教えたからでした。電話を受けてもまだ初回のステージは失敗だったと言えず「大丈夫」と強がりを言ってしまうこのみでしたが、Pはすぐ彼女が強がりを言っていることを見抜き、励まします。プロデューサーとして、そして彼女をアイドルにスカウトした1人目のファンとして。
第8話のサブタイトルは「変わるためのステージ」。
冒頭で自ら語っていたとおり、このみは元々アイドル志望ではなく事務員志望で765プロを訪れたところをアイドルになるよう口説かれて進路を変更しました。アイドルになる、そう決めて765プロに入ったはいいものの、その実ここまでの登場シーンはオーディションを手伝っていたり、PC作業を手伝っていたり、事務員のようなことばかり。
どこかそれに落ち着いてしまいそうになっていた自分、しかし今日からは連れてきた子たちを、そして自分自身を、アイドルとして花開かせなければならない。Pの言葉を聞いて落ち着きと自信を取り戻した彼女は、決意を胸につぶやきます。
「”もう”大丈夫よ」
言葉にすると余計なことまで伝わってしまうことが多いから大人は面倒くさい。しかし逆にたった一言に溢れんばかりの感謝を乗せ伝えることも出来るのです。今回のシナリオは「人の”言葉”が相手の心、そして人生を変えていく」というのがテーマになってますよね。そしてテーマに対する言葉の選び方が実に、抜群にうまい。
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見違えた表情で控え室に戻ったこのみ。今度は自分が頼れる大人として、チームのメンバーを励まし立ち上がらせる番です。
「失敗してももう一度やればいい」
この言葉は就職した会社が倒産してしまった自身の経験を踏まえたもの。しかしメンバーである桃子の心にはこのみ本人が企図したよりも遙かに深く響きました。新しい人生をアイドルに賭ける、その思いの強さはこのみも人一倍であるものの、今の全てを芸能界復帰に賭けていると言ってもいい桃子を置いて勝るものはいません。このみの本気の言葉を聞いて桃子にもまた大きな変化のときが訪れます。
リーダーの言葉に勇気をもらったメンバーたち。
亜利沙ももちろんその一人。今自分たちに出来ることは何か、勇気が無ければ口に出来なかった思いつきを話し始めます。
「桃子ちゃんが嫌じゃなければなんですけど・・・」
行きの道中の出来事があっただけに、またオタクの知識として桃子のこれまでの足取りをある程度知っているだけに、本当に恐る恐る反応を見ながら提案したのは桃子の演じた過去作のパロディによる集客案。
残酷な発想であることは亜利沙も重々承知していましが、「今やれるだけのことをやる」このみのメッセージを受けた以上、ここで黙って引っ込めるわけにもいかない思いつきでした。そして「今やれるだけのことをやる」は亜利沙へ伝わったのと同時に桃子にも伝わったメッセージです。
「次のステージのために、使えるものは何であろうと使いたい」亜利沙の気持ちを汲んだ桃子は案に乗ることを了承しました。
第4話では成功するかどうか分からない賭けのようなイベントの開催に反対し、またステージ以外の活動について「これってアイドルの仕事なのかな?」とも言っていた桃子。今日までの経験や仲間たちとの触れ合いを経てアイドル活動に対する考え方が大きく変わっていることが窺えます。「変わるためのステージ」、第8話で一番変わったのって実は桃子なんじゃないでしょうか。
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ここからチームメンバー全員がアイドルへ賭ける意思が形となって現れはじめます。
元々超個性派集団なだけに、それぞれが得意とする分野で力を出せばとんでもないパワーになるのが765プロアイドル。製作なら小物から舞台装置まで何でも作れるロコ、演技力には定評のある千鶴、ドタバタコメディのノリなら本場仕込みの奈緒とその他のメンバーの顔ぶれは今回も申し分ありません。
園内へ繰り出すとあくまで遊園地のアトラクションに見えるよう大げさな身振り手振りを入れ、見た者に「何だろう?」と思わせるような必死のアピールをするアイドルたち。自分たちを見てもらいたい、楽しんでもらいたいという気持ちは徐々に場内のお客さん達にまで伝わってゆき、イベント会場にそれなりの数のギャラリーを誘導することに成功します。
この「何だろう?」と思わせる作戦、最終的な狙いはもちろんアイドルのステージに人を集めることなんですけど、これをサプライズで成功させるためには今目の前にいる子たちがアイドルだと気づかれないことが絶対条件です。そのため身バレする可能性があった桃子はこの客寄せに参加しなかった一方、他のメンバーはどれだけ騒いでも全く無名でバレようがないという状況を逆手にとっているところもよく出来てますよね。
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舞台での寸劇が始まってもなお何が起きているのか計りかねている観客席の人々。
しかしステージに桃子が現れると一斉に驚きと喜びの声があがります。それは紛れもなく「舞台の上に”あの”周防桃子がいる」という意味のどよめき。桃子自身が過去の栄光と切り捨てていた舞台上の輝きは、まだ完全に光を失ってはいなかったのです。
「今の桃子は子役探偵桃子じゃなくて、アイドル探偵桃子ちゃんだよ」
この口上は芸能界に復帰した桃子が今度はアイドルとして、新たな一歩を踏み出すという宣言とも言えるもの。
客席で桃子に再会できたことを大喜びする小さな女の子の姿は周防桃子のカムバックを待ち望んだ人々の心の象徴でもありました。
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イベントを成功に導き、メンバー全員の顔つきをアイドルに変えて凱旋したこのみは今日の出来事を振り返るかのように劇場外でたたずんでいました。
「ここにいたんですね」と何か聞き飽きた気がしてならない台詞とともに駆け寄ってくるPへ振り返る彼女の表情が夕日に照らし出されます。
「私をアイドルにしてくれてありがとう」。
今日一日の出来事を経て、このみ自身の笑顔もまたアイドルと呼ぶに相応しいものに変貌していたのでした。
→ テレビ放送後の感想延長戦・第8話
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