はい、今日もミリアニを褒めます。
今日はミリアニ全体を貫く”流れ”の話です。
毎回とんでもないキャラ数ととんでもない情報量が詰め込まれた状態で進行していくミリアニ、しかし不思議なことに「何がどうなっているのか分からない」という感覚に陥ることがありません。
シナリオの大筋はシンプルという点が大きいのは間違いないんですが、もう一つ、見る側の理解を促進させるために全編を通して貫かれている重要なルールがあります。それは『今、誰がシナリオを動かしているか』を常に画面に明示させることです。
「そんな目印、どこかに出てたっけ?」 あるんですよこれが。
参考のため過去にうちのサイトへアップした感想記事の画像を並べてみましょう。
わかった?
答えは極めて単純で『今シナリオの軸になっているキャラが画面向かって右、補助的な役割のキャラが左に配置される』というルールです。ミリアニではこれがかなり徹底されていて、基本的に話しかける側の子は右側から左向きに、話しかけられる側の子は左側から右向きに描かれます。
ちょっと前に漫画・ドラゴンボールが何故読みやすいのか?というのがネットで話題になったときも盛んに語られていた記憶があるこの話。我々日本人は縦書きの文章を右上から左下に向かって読む習慣が身についているため、ぱっと画面を見たとき無意識のうちに右から左への”流れ”で内容を理解しようとします。
これは漫画、アニメに限らず、歌舞伎のセットは奥の間が右(上手)・玄関が左(下手)ですし、落語で一人何役もやる場合は目上の役が左向きにしゃべって目下の役は右を向いて話を聞くのが決まり。この流れに沿って情報を配置していけば見る側が勝手に優先番号を振っていってくれる・・・というのは、もはや文化の根底、本能レベルで染み付いているルールで、決してミリアニが発明したなんてものではないんですけど、徹底ぶりがすごいのよね。
『今この場面では誰が物語を回しているのか』は視聴者が無意識のうちに判断して耳を傾けてくれる。そしてその”重要人物”が確かに間違いなく軸になって話を進めていくため、内容がすっと頭に入ってくるんです。
上に用意した参考画面はわざわざこのエントリーに合わせてキャプチャしたものではなく、新たに撮影するのが面倒だったから過去にここへ掲載したものを並べただけです。これだけでも当てはまるシーンばかり出てくるっていうのは、やっぱり意図的にやっている工夫なんだろうなと。
この百合子のシーンは”流れ”の象徴とも言うべきもの。ここで百合子が左向きなのか右向きなのか、それだけで視聴者が受け取るニュアンスは変化してしまいます。
時間の流れも右から左が順方向。昴が投げたボールは右から左に飛んでいきます。
ステージシーンは主と従の最たるもの。ステージの上から呼びかけるアイドルは左向きに。
観客は右向きになります。ほんと良く出来てますよね。
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【応用編①】
同じステージのシーンでも全12話中1つだけ明らかに演者を左側(右向き)に据えて描いているものがあります。ネタバレになっちゃうからボカしますけど第9話のあのステージです。あのシーンは未来たちが会場の熱気に圧倒されるのがメインテーマ。パフォーマンスしている側の未来たちが押し負けるほどの熱気、これを表現したい場合は・・・そう、観客席とステージの配置を逆にするんです。
カメラワークや音響だけでなくこうした心理効果まで駆使しているからこそ、あの凄まじい臨場感が生み出されているんですね。
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【応用編②】
視聴者は知らず知らずのうちに右→左の流れで話が進むものだと思っているため、不意に左が「わっ!」と声を出すと意外性や驚き、不安定感を覚えます。
ここなんかそうですよね。
未来がだーっとしゃべっているところで唐突に左側にいる静香が全然違うトーンで口を挟む。すると視聴者は未来と一緒に思わず「なんだなんだ?」と静香の言葉に耳を傾けてしまうようになります。
ここもそうです。
左からこのみさんがものすごい勢いで走ってきて怒り出すことで子犬に噛みつかれたような感覚に陥るという。
極端な言い方をすると画面の右から来るものは正・秩序、左から来るものは逆・混沌です。仮にこのシーンでこのみさんが右側に立って左向きに未来に怒りの声を上げると正方向の怒り、つまり見た目で判断するなと言う真っ当なお叱りの言葉になってしまい、ギャグとして成立しづらくなってしまう。ここをギャグシーンとして見てもらうためにはこのみさんが右向きに怒っているというのがマストなんです。
登場シーンは完全にやべー奴扱いだったまつりも当然のごとく左側からやってきます。
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【発展編】
このルール破り演出を最大限活用しているのが混沌の女王(?)茜ちゃん。
山積みの茜ちゃんステッカーを指さして「これお前か!?」とお叱りモードの源P、右・秩序サイドから声を上げます・・・が、それをあっさり跳ね返す左・混沌サイドの茜ちゃん。本来右から左へ行くはずの流れを勢いでひっくり返し、視聴者にはハチャメチャでドタバタな印象がより強く残るようになります。
第4話でも源Pを振り回す茜ちゃんは例外的に左側から話しかけます。
桃子に叱られているときはこうなので、敢えて逆にしているのは間違いありません。
一方初対面の未来に対してはちゃんと左向きになる茜ちゃん。変なところが妙に律儀。
この視点で見ていると本当に面白いのが、あれだけ掟破りしておいて最後は左方向に走り去っていくんですよね。混沌の方向に。
その後もほとんどのシーンを左側で暴れて過ごす茜ちゃん。ほんとカワイイなこいつ。
やりたい放題だった茜ちゃんはこの後スマホと財産を取り上げられてしまったんですが、奪った麗花さんと美也も確か左側に逃亡していったはずです。混沌の女王も真の混沌には敵わなかった・・・と。
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まあ普段ミリアニを楽しむぶんにはこんなこと意識しなくていいというか、むしろこの”流れ”はそういう余計なことを意識させないまま話を分かりやすくするための工夫です。
でもこれだけ徹底してやっているのを見てしまうと、ある種の感動すら沸いてきて思わず紹介せずにはいられなくなってしまってですね、いやほんと、見れば見るほど発見があって無限に面白いですね、ミリアニは。
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